人工的な四季制御・生態系管理

スマートアグリ・農業ICTの可能性

最終更新日:2017/04/18

推定市場規模
約1,500億円

 地球上では栽培スペースに限りがあり、害虫や干ばつ・水害などの影響を受ける農作物において、今後の人口増加後の価格高騰や安定供給に関する問題がある。これに対して、農作物を「工業生産的なアプローチ」で解決するという取り組みが進められている。
成長に必要な光源や水などを管理し大量生産を可能にする植物工場や、生産量が不作時に発生したデータを解析することで生産量の予測を高い精度で行う技術などは、実用化が進むことで食糧問題を解決するだけでなく、生産に必要となる重労働からの解放、経験などを基にした生産手法が原因で起こる跡継ぎ問題など、労働問題にも効果があると見込まれている。

 矢野経済研究所が2014年に発表した"植物工場市場に関する調査結果2013"に基づくと、2025年の日本国内における植物工場の市場規模予測は完全人工光型で約443億円、併用型・太陽光利用型で約1,057億円となっており、
 高騰するエネルギーコストという課題があるものの、省エネ・創エネシステムの開発や照明や空調、日本の環境に適合した環境制御システムなどのさらなる技術開発・低コスト化、生育コントロールによる高付加価値化などによる市場発展が期待されている。

未来への変化の兆し

  • 植物工場

     自然環境に左右されず安定して農作物を生産可能にする「植物工場」の取り組みが活発に行われている。
     コスト面のメリットや気象条件によって豊富な食物の摂取が難しかった地域問題の解決のみならず、工業生産用に使用されていた施設を光・温度・湿度など農作物栽培に必要な成分を人工制御する仕組みとして転換するといった点もあるため、光源用のLEDなど従来の製品ノウハウを活用できる選択肢が増えるなどのメリットが存在する。

     2014年に株式会社みらいによって世界最大級のLED照明を使用した植物工場「屋内レタス農場」が宮城県に登場した。従来の農法に比べ面積効率は100倍・成長速度2.5倍・水の使用はわずか1%となり無農薬栽培で植物の成長に最適化された波長のLEDを使用している。LED照明による屋内農場としては面積約2300平方メートルという世界最大規模を誇る。
     この植物工場では既に1日当たり約10000株のレタスを生産しており、従来の廃棄率を約50%から10%にまで減少させた。

     三菱総合研究所の調査レポートによると国内植物工場は2012年から2014年にかけて約2倍となる383か所が設立されており、温度や二酸化炭素濃度などの環境条件を制御することで短期間での栽培・収穫が可能で安定的な生産と雇用が見込めることから、新しい産業として大きく期待されている。 植物工場
  • 不作のない農業

     農業の不作による経済的損失は大きく、その打開策の一つとしてICTを活用した農業のクラウド化という手法が普及してきている。
     これは従来は高額な投資が必要だった設備を、センサー機器を設置するだけで農業環境の情報を自動収集しデータ解析することで異常を最速で発見・予測する仕組みへと転換するものである。計測されたデータはクラウド上に蓄積されるため、煩雑な記録作業が不要になるだけでなく蓄積された情報を他の農家に共有することでその土地で生産される作物の品質水準を担保することが可能となる。

     富士通株式会社により2012年から提供開始されている農業ICTクラウドサービスの高い効果が2014年に続々発表された。このサービスはAkisaiと呼ばれモバイル端末・センサーからデータを収集・分析・利活用して従来の農業熟練者の経験や勘による作業を可視化することで組織マネジメントを実現する。
     これにより滋賀県フクハラファームでは作業プロセスの改善によって2年で補植時間を30%削減した。また和歌山県の早和果樹園では樹木一本ごとにIDを付与しセンサーや・スマートフォンで情報を管理する仕組みを構築し、収穫率を24%から53%にまで向上させた。

     従来は遠い関係にあると思われていたITと農業という分野は近年急激に密接なものとなり急成長を遂げている。属人的で環境に左右されがちだった農業がIT化によって安全で効率的な取り組みを実現し、品質や生産性の改善など、更なる実用化に向けた動きが活発化すると考えられる。 不作のない農業
  • 農業IT先進国、オランダに学ぶ

     オランダという国は大半の人が知っているが、実は日本の九州とほぼおなじ面積しかなく、しかも岩塩混じりの土壌、曇天が多い気候で、ヨーロッパの小国であることは意外と知られていない。
     しかも、そんな国土や環境に恵まれていないオランダが世界で「農作物輸出額第2位」であることも、あまり知られていない。オランダは農業ITの先進国なのである。

     オランダでは一般農家の約80%が、給水や肥料供給の管理を自動制御システムによって制御し農作物を育てている。
     国名を聞いて想起されやすいチューリップなどの「生花」についても、1990年から生花の育成や流通システムのIT化のため援助支援金を出し続けており、遠隔競売システムの導入でボタン一つで世界のどこからでも競りに参加できるほどのシステムを保有している。

     元々、オランダは1980年台にスペインやギリシャなど温暖で作物の育成に適した南欧の国からの農作物が流通し、国産物の売れ行きで危機に瀕していた。
     そこで農業従事者はコンピューター制御のしやすい温室内での管理、効率的な栽培システムの試行錯誤を重ね、生産量と輸出量を伸ばし、最終的には2013年から政府による資金援助を得るまでになった。

     今後も、種まきや肥料供給に使うドローン操縦用のアプリケーションの実用化なども計画されている。
     国土が小さく、栽培に向いてない土壌でもITの活用によって効率的な作物生産が出来ることを実証したオランダに、世界の農業従事者が学べる点は多いと思われる。
    農業IT先進国、オランダに学ぶ
  •  国連食糧農業機関(FAO)のデータでは、農場から加工会社、店舗、実際に食卓に上るまでのプロセスにおいて、年間およそ1兆ドルの作物が無駄になっているという。
     アフリカやアジアの途上国での割合が大きいが、欧米など先進国でも10%以上の作物が無駄になっており、経済基盤関係なく全世界共通の課題といえる。

     IoT技術の発達で、こうした問題に取り組む企業が多く現れている。
     アメリカのCentaur Analytics社は作物貯蔵時の品質と安全のため、保存状態を監視する技術を提供している。害虫は作物を食い荒らすだけでなく貯蔵場所の湿度を変化させ二次被害も広がる。燻蒸剤を投与することで対策を講じるのが従来の手法だが肝心の投与量を誤れば全く害虫に効き目がなくなるが、このシステムを利用することで事前予測や適切な対応が可能となる。
     そして、逐一目視で監視するために倉庫まで出向かずとも、より精度の高い状況をスマートフォン等に通知してくれる。これは農作物の流通にかかわる人たちの作業負荷軽減にもなる。

     経験や勘に頼るものではなく、対策も適切に行え、作業負荷も軽減される。
     農作物の流通とロス軽減におけるこうしたソリューションの発展は、農作物に関する労働問題全体にも、良い影響があると期待されている。

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