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カテゴリー:日本 - 生活必需品 ( 世界での技術分布を見る )

世界でのこの技術分類の技術分布

技術 高ショ糖ストレス耐性を有する酵母

出願人 発明者
出願日 2011年12月8日 (3年0ヶ月経過) 出願番号 2011-269051
公開日 2013年6月17日 (1年6ヶ月経過) 公開番号 2013-118851
登録日 - 登録番号 -
特許期限 2031年12月8日 (残16年11ヶ月) 状態 未査定
技術分野
関連キーワード

図面 (3)

課題

酵母発酵力の低下をもたらす原因となっている環境ストレス一つである、高ショ糖ストレス耐性に優れた酵母、および、その製造方法、さらに該酵母の食品製造への利用方法を提供する。

解決手段

特定のアミノ酸配列コードする、もしくは特定の塩基配列を有するポリヌクレオチドからなるPOG1遺伝子を高発現する、高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母、上記ポリヌクレオチドを導入する工程を含む該酵母の作製方法、および高ショ糖ストレス耐性となったパン酵母を用いた、高ショ糖パン生地パンおよび菓子類の製造方法。

背景

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パンは、その製品製造過程パン酵母発酵による生地膨張を行う必要があるが、一定した品質のパンを提供するためには、パン酵母、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の発酵の綿密な制御が必要となる。パン酵母細胞は、製パン過程において、凍結乾燥高温、および高浸透圧などの多くの環境ストレスに曝されている(非特許文献1)。これらの環境ストレスが酵母の発酵力の低下をもたらすことから、環境ストレスに対する高度な耐性を有する酵母株作出技術の確立が望まれている。菓子パン製造において用いられるパン生地には、30%(対小麦粉比)を超える高い濃度ショ糖含有され、ショ糖に由来する高浸透圧により酵母の発酵力が制限される。そこで、ショ糖を高濃度で含有するパン生地で高い発酵力を維持できるパン酵母株の開発が期待されている。

製パン業界及びイースト製造業界では、製パン時にパン酵母に負荷され発酵を制限する環境ストレスに対する取り組みを行ってきた。特に、冷凍生地製パン法において負荷される冷凍ストレス及び菓子パン製造において負荷される高ショ糖ストレスに対する取り組みが進められた。その多くは、これら環境ストレスに対する耐性を有するパン酵母の作出によって問題解決を試みている。高糖生地製パンに最適な高ショ糖耐性酵母についても、各イーストメーカーにより開発及び販売が行われてきた。

一方、ストレス耐性機構に対する知見蓄積に伴い、耐性関連遺伝子改変することにより耐性を増強する試みもなされている。 特許文献1は、アミノ酸の1つであるプロリンが、冷凍や乾燥・酸化等のストレスから酵母防御する性質を有することを開示し、特許文献2は、変異型のγ-グルタミルキナーゼコードするPRO1遺伝子を発現し、プロリンオキシダーゼをコードするPUT1遺伝子を破壊した酵母株が細胞にプロリンを蓄積することでエタノール耐性となることを開示する。 特許文献3は、酸性トレハラーゼをコードするATH1遺伝子の破壊株で、冷凍生地ストレス耐性及び高ショ糖ストレス耐性が高まることを開示する。 特許文献4は、アルギナーゼをコードするCAR1遺伝子の破壊株で、細胞内極性の高いアミノ酸が著量蓄積され、冷凍ストレス耐性が高まることを開示する。 非特許文献2から4は、N-アセチルトランスフェラーゼMpr1が、酵母を、熱ショック過酸化水素処理エタノール、および冷凍などの酸化ストレスから防御していることを、特許文献5は、変異型Mpr1を効率よく発現させた、乾燥および高温耐性を有する形質転換パン酵母を開示する。 非特許文献5は、PMR1遺伝子またはSNF5遺伝子の破壊により、冷凍ストレス耐性が損なわれることを開示する。 非特許文献6は、CBS2遺伝子の欠損により、乾燥ストレスに対して感受性になることを開示する。 非特許文献7は、DBF2遺伝子の破壊により、ソルビトールストレスに対して高感受性になることを開示する。 非特許文献8は、芳香族アミノ酸合成関連の遺伝子(ARO1など)の破壊により、高ショ糖ストレス耐性が著しく損なわれること、BUD23、GON7、SPT20の遺伝子破壊株で高ショ糖ストレスに高い感受性を示すことを開示する。 特許文献6は、リン酸タンパク質脱リン酸化基質とするホスファターゼをコードするOCA1遺伝子またはOCA2遺伝子、あるいはALD2遺伝子の破壊株で高ショ糖ストレス耐性が高まることを開示する。

概要

酵母の発酵力の低下をもたらす原因となっている環境ストレスの一つである、高ショ糖ストレス耐性に優れた酵母、および、その製造方法、さらに該酵母の食品製造への利用方法を提供する。特定のアミノ酸配列をコードする、もしくは特定の塩基配列を有するポリヌクレオチドからなるPOG1遺伝子を高発現する、高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母、上記ポリヌクレオチドを導入する工程を含む該酵母の作製方法、および高ショ糖ストレス耐性となったパン酵母を用いた、高ショ糖パン生地、パンおよび菓子類の製造方法。なし

目的

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、菓子パン製造などにおける酵母発酵の環境ストレスである高ショ糖環境においても十分に発酵力を維持できる酵母、すなわち、十分に高いショ糖ストレス耐性を有する酵母を提供すること、および、そのような酵母の育種法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、そのような酵母を用いる、パン生地、パン、菓子類の製造方法を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項

請求項1

POG1遺伝子を高発現する、高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母

請求項2

POG1遺伝子が以下のいずれかからなることを特徴とする、請求項1に記載の酵母:(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列コードするポリヌクレオチド;(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1又は数個以上のアミノ酸残基欠失置換、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件ハイブリダイズし、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

請求項3

前記酵母はパン酵母である、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の酵母。

請求項4

請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酵母を用いる、高ショ糖パン生地製造方法

請求項5

請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酵母を用いる、パンの製造方法。

請求項6

請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酵母を用いる、菓子類の製造方法。

請求項7

以下のいずれかに記載のポリヌクレオチドを導入する工程を含む高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母の作製方法:(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1又は数個以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド;(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

請求項8

請求項7に記載の方法であって、さらに、前記ポリヌクレオチドを導入した変異型酵母と、変異を有さない酵母とを、ショ糖ストレス耐性について比較する工程、を包含する方法。

請求項9

請求項8に記載の方法であって、さらに、高ショ糖ストレス耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、を包含する方法。

詳細

技術分野

0001

本発明は、酵母育種の分野に関する。さらに、本発明は、高ショ糖ストレスに対する耐性に優れたパン酵母、該酵母を用いるパン生地パン、および、菓子類等の製造方法、ならびに、これら製造方法によって生産された製品に関する。


背景技術

0002

パンは、その製品の製造過程でパン酵母の発酵による生地膨張を行う必要があるが、一定した品質のパンを提供するためには、パン酵母、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の発酵の綿密な制御が必要となる。パン酵母細胞は、製パン過程において、凍結乾燥高温、および高浸透圧などの多くの環境ストレスに曝されている(非特許文献1)。これらの環境ストレスが酵母の発酵力の低下をもたらすことから、環境ストレスに対する高度な耐性を有する酵母株作出技術の確立が望まれている。菓子パン製造において用いられるパン生地には、30%(対小麦粉比)を超える高い濃度のショ糖が含有され、ショ糖に由来する高浸透圧により酵母の発酵力が制限される。そこで、ショ糖を高濃度で含有するパン生地で高い発酵力を維持できるパン酵母株の開発が期待されている。

0003

製パン業界及びイースト製造業界では、製パン時にパン酵母に負荷され発酵を制限する環境ストレスに対する取り組みを行ってきた。特に、冷凍生地製パン法において負荷される冷凍ストレス及び菓子パン製造において負荷される高ショ糖ストレスに対する取り組みが進められた。その多くは、これら環境ストレスに対する耐性を有するパン酵母の作出によって問題解決を試みている。高糖生地製パンに最適な高ショ糖耐性酵母についても、各イーストメーカーにより開発及び販売が行われてきた。

0004

一方、ストレス耐性機構に対する知見蓄積に伴い、耐性関連遺伝子改変することにより耐性を増強する試みもなされている。 特許文献1は、アミノ酸の1つであるプロリンが、冷凍や乾燥・酸化等のストレスから酵母を防御する性質を有することを開示し、特許文献2は、変異型のγ-グルタミルキナーゼコードするPRO1遺伝子を発現し、プロリンオキシダーゼをコードするPUT1遺伝子を破壊した酵母株が細胞にプロリンを蓄積することでエタノール耐性となることを開示する。 特許文献3は、酸性トレハラーゼをコードするATH1遺伝子の破壊株で、冷凍生地ストレス耐性及び高ショ糖ストレス耐性が高まることを開示する。 特許文献4は、アルギナーゼをコードするCAR1遺伝子の破壊株で、細胞内極性の高いアミノ酸が著量蓄積され、冷凍ストレス耐性が高まることを開示する。 非特許文献2から4は、N-アセチルトランスフェラーゼMpr1が、酵母を、熱ショック過酸化水素処理エタノール、および冷凍などの酸化ストレスから防御していることを、特許文献5は、変異型Mpr1を効率よく発現させた、乾燥および高温耐性を有する形質転換パン酵母を開示する。 非特許文献5は、PMR1遺伝子またはSNF5遺伝子の破壊により、冷凍ストレス耐性が損なわれることを開示する。 非特許文献6は、CBS2遺伝子の欠損により、乾燥ストレスに対して感受性になることを開示する。 非特許文献7は、DBF2遺伝子の破壊により、ソルビトールストレスに対して高感受性になることを開示する。 非特許文献8は、芳香族アミノ酸合成関連の遺伝子(ARO1など)の破壊により、高ショ糖ストレス耐性が著しく損なわれること、BUD23、GON7、SPT20の遺伝子破壊株で高ショ糖ストレスに高い感受性を示すことを開示する。 特許文献6は、リン酸タンパク質脱リン酸化基質とするホスファターゼをコードするOCA1遺伝子またはOCA2遺伝子、あるいはALD2遺伝子の破壊株で高ショ糖ストレス耐性が高まることを開示する。

0005

特開平9−234058号公報 特開2006−67806号公報 特開平11−169180号公報 特開2001−238665号公報 特開2010−183887号公報 特開2008−148688号公報

0006

Attfield, Nat. Biotechnol. 15:1351-1357 (1997) Du and Takagi, Appl. Microbiol. Biotechnol. 75:1343-1351 (2007) Du and Takagi, J. Biochem. 138:391-397 (2005) Nomura and Takagi, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101:12616-12621 (2004) Ando et al., FEMS YeastRes. 7:244-253 (2007) Shima et al., Yeast 25:179-190(2008) Makrantoni et al.,Microbilogy 153:4016-4026 (2007) Ando et al., FEMS YeastRes. 6:249-267 (2006)


発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、ストレス耐性を有するパン酵母の探索はいまだ十分とはいえない。このためにストレス耐性に関与する遺伝子を見出し、より優れたストレス耐性を有する酵母または、そのような酵母の育種法の開発が強く求められている。

0008

本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、菓子パン製造などにおける酵母発酵の環境ストレスである高ショ糖環境においても十分に発酵力を維持できる酵母、すなわち、十分に高いショ糖ストレス耐性を有する酵母を提供すること、および、そのような酵母の育種法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、そのような酵母を用いる、パン生地、パン、菓子類の製造方法を提供することを課題とする。


課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、POG1遺伝子に着目した。POG1遺伝子の過剰発現株は塩化リチウム耐性の表現型を示すことが実験室酵母株で知られている (Demae et al., FEMS Microbiol. Lett., 277, 70-78 (2007))。本発明者らは、酵母においてPOG1遺伝子の発現を増大することによって酵母の高ショ糖ストレス耐性能を増強できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下の構成からなるものである。

0010

(1)POG1遺伝子を高発現する、高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母。 (2)POG1遺伝子が以下のいずれかからなることを特徴とする、上記(1)記載の酵母: (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド; (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1又は数個以上のアミノ酸残基欠失置換、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド; (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件ハイブリダイズし、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 (3)前記酵母はパン酵母である、上記(1)〜(2)のいずれかに記載の酵母。 (4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酵母を用いる、高ショ糖パン生地の製造方法。 (5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酵母を用いる、パンの製造方法。 (6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酵母を用いる、菓子類の製造方法。 (7)以下のいずれかに記載のポリヌクレオチドを導入する工程を含む高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母の作製方法: (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド; (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1又は数個以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド; (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 (8)上記(7)に記載の方法であって、さらに、前記ポリヌクレオチドを導入した変異型酵母と変異を有さない酵母とをショ糖ストレス耐性について比較する工程、を包含する方法。 (9)上記(8)に記載の方法であって、さらに、高ショ糖ストレス耐性の向上した変異型酵母を選択する工程、を包含する方法。


発明の効果

0011

本発明により、高ショ糖ストレスに対し、より耐性を有する酵母株を容易に得ることできる。さらに、本発明によって、所定の酵母株を簡便に高ショ糖ストレス耐性株とすることも可能である。このため本発明の酵母は、高ショ糖濃度菓子パン生地などの製造に好適である。


図面の簡単な説明

0012

図1は、POG1遺伝子増強株の作製法を示す図である。 図2は、ストレス条件(30%ショ糖濃度)における発酵力を比較した結果を示す図である。Wildは野生株、POG1はPOG1遺伝子高発現酵母株、Δpog1はPOG1遺伝子破壊酵母株をそれぞれ示す。 図3は、ストレス条件(30%ショ糖濃度)における発酵力を比較した結果を示す図である。野生株(Wild)の炭酸ガス発生量を100とし、POG1遺伝子高発現酵母株(POG1)およびPOG1遺伝子破壊酵母株(Δpog1)の炭酸ガス発生量との相対比較を示す。


実施例

0013

本発明の実施形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。本明細書において特記しない限り、数値範囲を示す「A〜B」は、「A以上B以下」を意味する。

0014

また、本明細書中で使用される場合、塩基およびアミノ酸の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を使用する。本明細書において使用される場合、用語「タンパク質」は、「ペプチド」または「ポリペプチド」と交換可能に使用される。また、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体意図される。ここで、遺伝子は、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、又はRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNA又はRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNA又はRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。また、遺伝子は化学的に合成してもよく、コードするタンパク質の発現が向上するように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更してもよい。勿論、同じアミノ酸をコードするコドン同士であれば置換することも可能である。また、遺伝子は、タンパク質をコードするものであれば、遺伝暗号縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。

0015

<1.用語の定義> 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。 本明細書において「酵母」とは、大部分生活環単細胞経過する菌類をいう。代表的な酵母としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属に属する酵母、特にSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces ludwigii、およびSchizosaccharomyces pombeが挙げられる。

0016

本明細書において「パン酵母」とは、パンの製造に使用される、Saccharomyces cerevisiaeに属し、パンの製造に使用される酵母をいう。好ましくは、パン酵母は二倍体のものである。二倍体の酵母は一倍体と比較して発酵速度が速い。

0017

本明細書において「ショ糖濃度(%)」とは、特に単位を記載しない限り、発酵する材料中の小麦粉に対するショ糖の相対濃度をいい、より具体的には、小麦粉100gに対して添加されるショ糖のグラム数をいう。

0018

本明細書において「高ショ糖ストレス耐性」とは、ショ糖濃度が高い環境下において、野生型酵母と比較してより高い発酵力を示す酵母の特性をいう。代表的には、変異型酵母が「高ショ糖ストレス耐性」を有するか否かについては、30%ショ糖濃度下における発酵力を酵母が発生する炭酸ガス発生量指標として決定する。

0019

本明細書において「発酵力」とは、酵母を培養した場合に、糖質無酸素的に分解した代謝産物を生じる能力をいう。酵母の発酵には、代表的には、アルコール発酵グリセロール発酵などが挙げられるが、これらに限定されない。発酵力を示す指標としては、例えば、パン生地中の酵母から生じる炭酸ガス量測定するファーモグラフという機械を使用することで、パン生地の発酵力を測定する方法使用可能である。その単位としては、例えば、OD600が100である酵母が発生する炭酸ガス量をml/100 OD600として用いることができるが、これに限定されない。上記以外の指標としては、例えば、低糖条件における発酵力(F10)、高糖状態における発酵力(F40)、およびマルトース発酵力(Fm)などが挙げられるが、これらに限定されない。

0020

本明細書において「生地」とは、パン類の発酵に供される材料のみならず、パン類の生地に添加される「種生地」をも含む。本明細書において使用する場合、「種生地」とは、パン生地の発酵を行うために添加される種(スタータ)であって、発酵に必要な菌および配合原材料の少なくとも一部を含む生地をいう。

0021

本明細書において「発酵」とは、配合原材料中の物質の少なくとも一部が、菌によって分解される現象をいう。

0022

本明細書において「高ショ糖パン生地」とは、ショ糖を高濃度(限定されることはないが、例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、および、60%)で含有するパン生地をいう。

0023

本明細書において「菓子類」とは、小麦粉を主体として、ショ糖を含み、発酵過程を経て製造される食品をいう。

0024

本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる塩基配列に特異的な本鎖のポリヌクレオチドが形成され、非特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成されない条件をいう。換言すれば、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッド融解温度Tm値)から15℃、好ましくは10℃、更に好ましくは5℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件ともいえる。例えば、一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件を挙げることができる。一例を示すと、0.25M Na2HPO4,pH7.2,7%SDS,1mM EDTA,1×デンハルト溶液からなる緩衝液中で温度が60〜68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で16〜24時間ハイブリダイズさせ、さらに20mMNa2HPO4,pH7.2,1%SDS,1mM EDTAからなる緩衝液中で温度が60〜68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で15分間洗浄を2回行う条件を挙げることができる。他の例としては、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC(塩化ナトリウムクエン酸ナトリウム)、50mM HEES pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/ml変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの洗浄の条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待し得る。ただし、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせ例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。例えば、当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Woodbury, NY (2001))等を参照することにより、こうした遺伝子を容易に取得することができる。

0025

本明細書において配列核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の「同一性」とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べ得る。アミノ酸配列および塩基配列の同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールである、FASTA検索BLAST検索により決定することができる。

0026

<2.高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母> 本発明における酵母では、POG1遺伝子を高発現する。POG1遺伝子は、DNA配列から推定すると、分子量約39kDaのタンパク質Pog1をコードしている。これまで転写因子として酵母の細胞周期制御に関わるという報告があるが(Maria, A. et al., Genetics, 151, 531-543 (1999))、アミノ酸配列上に転写因子の特徴であるDNA結合モチーフは見出されず、実際に遺伝子の転写を制御しているという報告もないため、その機能は未だに不明のままである。またこれまでに、推定アミノ酸配列レベルで相同性のある遺伝子は、酵母のみならず、すべての生物種で見つかっていない。POG1遺伝子は酵母ユビキチンリガーゼRsp5変異株ストレス感受性を相補するマルチコピーサプレッサーとして取得され、同遺伝子の過剰発現株が塩化リチウム耐性の表現型を示すことが実験室酵母株で知られているが (Demae et al., FEMS Microbiol. Lett., 277, 70-78 (2007)) 、POG1遺伝子の発現増強によって高ショ糖ストレス耐性の向上が得られたことは全く予想外であった。

0027

POG1遺伝子は、上記のように定義づけされるものであれば、特に限定しないが、好ましくは以下のいずれかのポリヌクレオチドからなる: (a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド; (b)配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス糖耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (c)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1又は数個以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド; (e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

0028

上記(b)のポリヌクレオチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列と一定以上の相同性を有し、かつ高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を有しているものである。一定以上の相同性とは、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%以上である。

0029

上記(c)のポリヌクレオチドにおいて、欠失、置換、若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、高ショ糖ストレス耐性を増強させる活性を失わせない限り、その個数は制限されないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異導入法により欠失、置換、若しくは付加できる程度の数をいう。通常は、30アミノ酸以内であり、好ましくは20アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内であり、最も好ましくは5アミノ酸以内(例えば、5,4,3,2,1アミノ酸)である。変異を導入したタンパク質が酵母に所望形質付与するかどうかは、そのタンパク質をコードする遺伝子を発現させ、その酵母の高ショ糖ストレス耐性が向上しているかどうか調べることにより判断できる。また、ここでいう「変異」は、主には部位特異的突然変異誘発法等により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。

0030

変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる。さらに、例えば、変異マトリクス(mutational matrix)によってアミノ酸を分類することも周知である(Taylor 1986, J. Theor. Biol. 119, 205-218; Sambrook and Russell, Molecular Cloning 3rd ed., A7.6-A7.9, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)。この分類を以下に要約すると、脂肪族アミノ酸(L、I、V)、芳香族アミノ酸(H、W、Y、F)、荷電アミノ酸(D、E、R、K、H)、正荷電アミノ酸(R、K、H)、負荷電アミノ酸(D、E)、疎水性アミノ酸(H、W、Y、F、M、L、I、V、C、A、G、T、K)、極性アミノ酸(T、S、N、D、E、Q、R、K、H、W、Y)、小型アミノ酸(P、V、C、A、G、T、S、N、D)、微小アミノ酸(A、G、S)及び大型(非小型)アミノ酸(Q、E、R、K、H、W、Y、F、M、L、I)が挙げられる。なお、上記括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す。0

0031

あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。さらに、標的アミノ酸残基は、共通した性質をできるだけ多く有するアミノ酸残基に変異させることがより好ましい。

0032

また、上記(e)のポリヌクレオチドは、上記(d)のポリヌクレオチド(配列番号2に記載の塩基配列)と相同性において少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列の同一性を有することが好ましい。

0033

本酵母は、好ましくは、POG1遺伝子を高発現可能な状態で保持している。かかる酵母におけるPOG1遺伝子の保持形態には、各種形態が挙げられる。例えば、酵母が本来的に有する内在性POG1遺伝子の発現を増強するには、強力な誘導的プロモーター構成的プロモーターの制御下に内在性POG1遺伝子を連結する構成を遺伝子組換えにより酵母に保持されていることが好ましい。また、適当なプロモーターの制御下に内在性POG1遺伝子を連結する構成のDNA断片複数コピーが遺伝子組換えにより酵母に保持されていてもよい。このような構成のDNA断片を複数コピーが導入されて保持されていてもよい。また、外来性のPOG1遺伝子を酵母内で発現させることにより、POG1遺伝子の発現を増強する場合には、適当なプロモーター、好ましくは、強力な誘導的又は構成的プロモーターの制御下に外来性のPOG1遺伝子を連結した構成が遺伝子組換えにより酵母に保持されていることが好ましい。酵母は、遺伝子組換えにより内在性と外来性の双方のPOG1遺伝子の発現が増強されていてもよい。このようなDNA断片は、相同組換え技術により酵母の染色体上組み込まれていてもよいし、プラスミド等の染色体外DNAとして保持されていてもよいし、これらの双方であってもよい。かかる遺伝子組換えは、例えば、SambrookとRussellの実験書(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)等を適宜参照することにより当業者であれば実施することができる。また、細胞の種類に応じて適切なプロモーターも適宜選択される。

0034

たとえば、POG1遺伝子を高発現する酵母としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA等を適当なプロモーター制御下に連結されたDNA構築物を染色体外あるいは染色体外に導入し保持させた酵母が挙げられる。酵母は、好ましくはパン酵母であり、さらに好ましくは二倍体パン酵母である。

0035

このような酵母は、実施例において示すように、高ショ糖ストレス耐性を有し、高ショ糖の存在下において、POG1遺伝子が発現していないか、発現が増強されていない場合と比較して、発酵力が向上されている。

0036

<3.高ショ糖耐性が増強された酵母の作製方法> 本発明の高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母の作製方法は遺伝子組換え技術を用いて、内在性または外来性のPOG1遺伝子を誘導的または構成的なプロモーターの制御下に連結して酵母に導入することによって、POG1遺伝子の発現量を増大させた酵母を得る工程を含む。

0037

本発明の酵母への遺伝子の導入は、対象となる酵母に応じて従来公知の方法のいずれを用いてもよく、特に限定されない。酵母に遺伝子を導入する方法は、例えば「バイオマニュアルシリーズ10 酵母による遺伝子実験法」(土社)、及び「生物化学実験法39 酵母分子遺伝子実験法」(学会出版センター)等の教科書の記載に順じて行えばよい。

0038

具体的には、POG1遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)をPCR法等の公知の方法によって調製し、これを酵母で発現可能なプロモーターの下流に連結して遺伝子カセット作製し、酵母細胞内で発現するためのベクターとすればよい。

0039

かかるベクターは、例えばPCRにより調製された遺伝子の両端に適切な制限酵素サイトを付加し、当該制限酵素切断し、これを別途適切な制限酵素で切断したプラスミドベクターDNAリガーゼを用いて挿入することによって構築できる。プラスミドに挿入されたDNAは大腸菌を用いることによって容易に増幅、単離、精製が可能である。

0040

プロモーターとしては、酵母における発現に用いることが知られているものであれば、いずれのプロモーターを用いてもよく、例えばGAL1、GAL10、PHO5、PGK1、ADH1、AOX1、TDH3等の酵母由来の遺伝子のプロモーターが挙げられる。特に高発現プロモーターが好ましく、例えば、TDH3が挙げられる

0041

かかるベクターは、複製開始点、例えば2μmDNA由来のもの、選択マーカー、例えばLEU2、URA3,TRP1等を含んでいることが好適であり、さらに必要に応じてエンハンサーターミネーターリボソーム結合部位ポリアデニル化シグナル配列等を含んでいてもよい。酵母用ベクターとして、種々の市販品があり、宿主となる酵母に応じて適宜選択すれすればよい。

0042

酵母が内在性のPOG1遺伝子あるいはそのホモログを有している場合には、内在性のPOG1あるいはそのホモログ遺伝子共存させてもよい。内在性のPOG1遺伝子あるいはそのホモログと共存させる場合、もしくは酵母がPOG1遺伝子あるいはそのホモログを有していない場合には、自律複製するプラスミドベクターを用いて形質転換を行えばよい。自律複製するプラスミドベクターとしては、例えばpAD4(LEU2マーカー)やpYES2(URA3マーカー)等の2μmプラスミド由来の複製開始点を有しているベクターが挙げられる。

0043

本発明の高ショ糖ストレス耐性が増強された酵母の作製方法は遺伝子組換え技術であれば限定されないが、本発明によるパン酵母は、すべて酵母の遺伝子からなり、外来遺伝子を一切含まないセルフクローニング技術で作製されることが好ましい。セルフクローニング技術で作製された酵母は、通常の食品微生物と同様に扱うことが出来るためである。このとき、挿入するURA3や他のマーカー遺伝子は、セルフクローニングを達成するために、Saccharomyces cerevisiae、特にパン酵母のものが好ましい。

0044

本発明に係る酵母は好ましくは二倍体である。POG1遺伝子の二倍体ホモ接合型変異株を作製する方法としては、例えば、(1)POG1遺伝子の一倍体変異株を異なる接合型の一倍体より作製し、それらの一倍体変異株を交雑して二倍体変異株を作製する方法、および、(2)異なる2つの選択マーカーを用い、第一の選択マーカーを用いて第一の対立遺伝子に変異を導入し、その後、その変異株を用いて、第二の選択マーカーを用いて第二の対立遺伝子に変異を導入する方法、が挙げられるがこれらに限定されない。

0045

<4.高ショ糖パン生地の製造方法、パンの製造方法> 本発明の酵母は、POG1遺伝子の発現が増強されており、高ショ糖ストレス耐性、特に高ショ糖濃度のパン生地における高ショ糖ストレス耐性に極めて優れている。したがって、本発明に係るパン酵母は、菓子パン生地など高ショ糖濃度のパン生地において、高ショ糖ストレスによく耐え、発酵させた時にその能力を発揮し、これを焼き上げた時に、美味な各種パンを得ることができる。本発明に係る高ショ糖パン生地は、POG1遺伝子の発現が増強された高ショ糖ストレス耐性パン酵母を使用するほかは、定法にしたがって製造すればよく、パンの製造もPOG1遺伝子の発現が増強された高ショ糖ストレス耐性パン酵母を使用するほかは、定法にしたがって行えばよい。

0046

<5.菓子類の製造方法> 本発明の酵母は、POG1遺伝子の発現が増強されており、高ショ糖ストレス耐性、特に高ショ糖濃度の菓子生地における高ショ糖ストレス耐性に極めて優れている。したがって、本発明に係る酵母は、高ショ糖濃度の菓子生地などで、高ショ糖ストレスによく耐え、発酵させた時にその能力を発揮し、これを焼き上げた時に、美味な各種菓子類を得ることができる。菓子類の製造はPOG1遺伝子の発現が増強された高ショ糖ストレス耐性パン酵母を使用するほかは、定法にしたがって行えばよい。

0047

本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、明細書に記載した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。

0048

(1)実用酵母を用いる、POG1遺伝子高発現二倍体酵母の作製: POG1遺伝子高発現二倍体パン酵母株の作製法を図1に示す。POG1プロモーターの一部の配列増幅のために、正方向プライマーとして核酸配列(TCCGCACGTAGTGTTTTC:配列番号3)を有するプライマー1、および逆方向プライマーとして核酸配列(AATATGGCATCCACTTTGATTT:配列番号4)を有するプライマー2を用いた。また、POG1遺伝子の一部の配列増幅のために、正方向プライマーとして核酸配列(ATGAAGCAGGAGCCACATA:配列番号5)を有するプライマー5、および逆方向プライマーとして核酸配列(GATCTATATCTTCTATGGCCTCG:配列番号6)を有するプライマー6を用いた。S. cerevisiaeの染色体DNAを鋳型としてこれらプライマー対を用いて、POG1遺伝子のプロモーター配列の一部とPоg1タンパク質をコードするDNA配列の一部を増幅した。また、栄養要求性マーカーであるURA3遺伝子発現カセットとPOG1遺伝子の高発現に使用するTDH3遺伝子のプロモーターを連結した配列を含むプラスミド(pTAC-URA3-PTDH3)を鋳型にして、POG1遺伝子のプロモーター配列の一部を付加したプライマー3(GAAATTGAAAAAAAATAAGTAAAGACGAAAATCAAAGTGGATGCCATATTcagggtccataaagcttttc:配列番号7)とPOG1遺伝子の一部を付加したプライマー4(CCTTTCGGCTTCTCTTTTTCTTCGGATTGTCTATGTGGCTCCTGCTTCATtttgtttgtttatgtgtgtt:配列番号8)を用いてPCRによって増幅した。得られた3つのDNA断片を混合し、プライマー1とプライマー6を用いてPOG1遺伝子高発現株作製用DNA断片を増幅した。 増幅断片をパン酵母一倍体ウラシル要求性株(3346 ura3−、3347 ura3−)に形質転換し、POG1遺伝子高発現株を、ウラシル非要求性を指標に単離した。POG1遺伝子高発現株が作製されたことを、POG1チェックフォワードプライマー(ACGGTAGGTATTGATTGTAATTCTG:配列番号9)およびPOG1チェックリバースプライマー(CCTGTCTCAACTTCTGAC:配列番号10)を用いるPCRによって確認した。 a型とα型それぞれの一倍体において作製したPOG1遺伝子高発現株同士を接合させることにより二倍体株を作製した。二倍体株が作製出来たことは、胞子形成培地上(0.05%グルコース、0.1%酵母エキス、1%酢酸カリウム、2%寒天)での胞子形成により確認した。

0049

(2)POG1遺伝子高発現二倍体酵母の高ショ糖ストレス耐性の評価: 実施例1において作製した変異株の高ショ糖ストレス耐性の評価を行った。野生株、POG1遺伝子高発現株、およびPOG1遺伝子破壊株を、市販のパン酵母製造プロセス模倣する廃糖蜜培地(5.88%廃糖蜜、0.214%尿素、0.051%リン酸二水素カリウム)で定常期まで培養した後、培養した細胞を、磁器乾燥版(ニットー株式会社)を使用して、含水量が68%になるまで脱水した。この酵母をパン生地用小麦粉100gに対して30gのショ糖、0.5gの塩化ナトリウム、水55mLを含む高糖パン生地に6g加えた。これら混合物をスワンソンタイプミキサー(National Mfg. Co., Ltd.)を用いて100rpmで3分間攪拌した後、40gずつに小分けし、スクリューキャップボトルに封をして入れ、30℃、120分間発酵を行い、炭酸ガス発生量をファーモグラフII(アトー株式会社)にて測定した。結果を図2図3および表1に示す。

0050

表1 本発明のPOG1遺伝子高発現株の野生株に対する発酵力の比

0051

その結果、POG1遺伝子を高発現する実用パン酵母二倍体株では、高濃度ショ糖を含むパン生地中での発酵力が野生株と比較して約12%有意に向上した。一方、POG1遺伝子を破壊した実用パン酵母二倍体株の発酵力は、野生株に比べて同等かわずかに低下する傾向にあった。このことから、POG1遺伝子高発現は高ショ糖ストレス耐性実用パン酵母の作製に適する方法であることが示された。

0052

その結果、POG1遺伝子発現増強株は極めて優れた高ショ糖ストレス耐性を有することが明らかとなった。

0053

本発明の酵母を用いることによって、高ショ糖環境であっても高い発酵力を発揮する酵母を単離することが可能となる。そのような酵母を用いることによって、従来、十分な発酵を行うことが困難であった菓子類製造などにおける高ショ糖環境での発酵の効率を高めることが可能となる。

0054

配列番号3〜10:プライマー


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