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技術 微生物燃料電池

出願人 発明者
出願日 2009年3月12日 (5年7ヶ月経過) 出願番号 2009-060332
公開日 2010年9月30日 (4年1ヶ月経過) 公開番号 2010-218690
登録日 2013年11月15日 (11ヶ月経過) 登録番号 5408650
特許期限 2029年3月12日 (残14年4ヶ月) 状態 特許維持
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以下の情報は公開日時点(2010年9月30日)のものです。

課題

光の無い環境下で使用できると共に、電流発生量を増加させることができる微生物燃料電池を提供する。

解決手段

微生物燃料電池1は、一対電極2と、前記電極2を電気的に接続する外部回路3とを備える。一対の電極2は、容器5内に設けられ、当該容器5内において一方の電極(負極)2a側にはShewanellaを培養した培養液が保持されている。他方の電極(正極)2bには、酸素を含む空気を供給し得るように構成されている。負極2a側に注入された培養液には、ポルフィリン添加されている。

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背景

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微生物燃料電池は、一対電極と、前記電極に電気的に接続された外部回路と、前記一対の電極を分離する隔膜とを備え、一方の電極側にはShewanellaなどの細胞外電子伝達能を有する微生物が保持されている。ここで、細胞外電子伝達能とは、金属イオンやその酸化物電子受容体として利用しこれらを還元する一連流れによって、生命活動に必要なエネルギー獲得する能力をいう(非特許文献1)。このような細胞外電子伝達能のひとつとして、細胞膜局在化したシトクロムを介して体外に電子放出するという、Shewanella loihica、及び、Shewanella oneidensisのようなShewanella属、Geobacter属等の一部の細菌に特有の電子伝達機構がある(非特許文献2,3)。

このように構成された微生物燃料電池は、微生物が前記一方の電極に電子を伝達することで電気エネルギー生産するデバイスである。エネルギー源には再生可能なバイオマス生活排水等に含まれる有機汚染物質を用いることができることから、持続可能なエネルギー源として近年注目されている。また、金属元素還元、固定する能力を持つ微生物もあり、排水の処理環境浄化の手段としても注目されている。微生物燃料電池には単一の微生物を用いる系と、排水などに生息する微生物群をそのまま使う混合培養系(例えば、特許文献1)の2つに大別される。

概要

光の無い環境下で使用できると共に、電流発生量を増加させることができる微生物燃料電池を提供する。微生物燃料電池1は、一対の電極2と、前記電極2を電気的に接続する外部回路3とを備える。一対の電極2は、容器5内に設けられ、当該容器5内において一方の電極(負極)2a側にはShewanellaを培養した培養液が保持されている。他方の電極(正極)2bには、酸素を含む空気を供給し得るように構成されている。負極2a側に注入された培養液には、ポルフィリン添加されている。

目的

そこで本発明は上記した問題点に鑑み、光の無い環境下で使用できると共に、電流発生量を増加させることができる微生物燃料電池を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項

以下の情報は公開日時点(2010年9月30日)のものです。

請求項1

一対電極と、有機物と、前記有機物を分解電子放出する細胞外電子伝達能を有する微生物と、前記電子を前記一対の電極の一方に伝達するメディエータとを備え微生物燃料電池において、前記微生物は光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を有し、前記メディエータがポルフィリン含有することを特徴とする微生物燃料電池。

請求項2

前記一対の電極と、前記有機物と、前記微生物と、前記メディエータとは、容器内に設けられており、前記容器は、微生物を活性化させるための外部光遮断され、内部を暗室状態にし得るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の微生物燃料電池。

請求項3

前記ポルフィリンが、水溶性ポルフィリンであることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物燃料電池。

請求項4

前記水溶性ポルフィリンが、カチオン性であることを特徴とする請求項3記載の微生物燃料電池。

請求項5

前記水溶性ポルフィリンが、鉄ポルフィリン又はマンガンポルフィリンであることを特徴とする請求項3記載の微生物燃料電池。

請求項6

一対の電極と、有機物と、前記有機物を分解し電子を放出する細胞外電子伝達能を有する微生物と、前記電子を前記一対の電極の一方に伝達するメディエータとを備える微生物燃料電池において、前記微生物は光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を有し、前記一方の電極はポルフィリンで修飾されていることを特徴とする微生物燃料電池。

請求項7

前記一対の電極と、前記有機物と、前記微生物と、前記メディエータとは、容器内に設けられており、前記容器は、微生物を活性化させるための外部光が遮断され、内部を暗室状態にし得るように構成されていることを特徴とする請求項6記載の微生物燃料電池。

詳細

以下の情報は 公開日時点 (2010年9月30日)のものです。

技術分野

0001

本発明は、微生物燃料電池に関するものである。


背景技術

0002

微生物燃料電池は、一対電極と、前記電極に電気的に接続された外部回路と、前記一対の電極を分離する隔膜とを備え、一方の電極側にはShewanellaなどの細胞外電子伝達能を有する微生物が保持されている。ここで、細胞外電子伝達能とは、金属イオンやその酸化物電子受容体として利用しこれらを還元する一連流れによって、生命活動に必要なエネルギー獲得する能力をいう(非特許文献1)。このような細胞外電子伝達能のひとつとして、細胞膜局在化したシトクロムを介して体外に電子放出するという、Shewanella loihica、及び、Shewanella oneidensisのようなShewanella属、Geobacter属等の一部の細菌に特有の電子伝達機構がある(非特許文献2,3)。

0003

このように構成された微生物燃料電池は、微生物が前記一方の電極に電子を伝達することで電気エネルギー生産するデバイスである。エネルギー源には再生可能なバイオマス生活排水等に含まれる有機汚染物質を用いることができることから、持続可能なエネルギー源として近年注目されている。また、金属元素還元、固定する能力を持つ微生物もあり、排水の処理環境浄化の手段としても注目されている。微生物燃料電池には単一の微生物を用いる系と、排水などに生息する微生物群をそのまま使う混合培養系(例えば、特許文献1)の2つに大別される。

0004

特開2006−81963号公報 特開2005−235484号公報

0005

Lovley D.R. ; Nat.Rev.Microbiol., 2006, 4, 497-508 Gralnick,J.A. ; Newman,D.K. ; Molecul.Microbiol. 2007, 65, 1-11 Hernandez,M.E. ; Newman,D.K. ; Cell.Mol.Life Sci. 2001, 58, 1562-1571


発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、上記特許文献1などの従来の微生物燃料電池では、既存白金触媒に用いた化学燃料電池と比較して電流密度が極めて低いことが問題となり実用の段階からは遠い、というのが現状である。ここ数年エネルギー密度は向上を続けているが、水素燃料電池などの化学燃料電池と比較すると、少なくともさらに数桁程度、電流密度を向上させなければ実用の段階まで進むことはできない。また、特許文献2に述べられているように色素増感タイプの微生物燃料電池が提案されている。これは微生物の光起電力を用いて発電させる方法が述べられているが、下水処理などで用いる場合必ずしも光照射ができる環境にあるとは限らない。

0007

従来、出力エネルギー密度を増大させるため、一般的には、HNQ(2-hydroxy-1,4-naphthoquinone)などの電子を伝達する電子メディエータ(以下、単にメディエータという)添加も検討されているが、電流発生量は充分でない。また、従来の微生物燃料電池では、負極における反応が光を必要とするので、構成が制限されると共に、光の強度によって電流量が変化してしまうという問題があった。

0008

そこで本発明は上記した問題点に鑑み、光の無い環境下で使用できると共に、電流発生量を増加させることができる微生物燃料電池を提供することを目的とする。


課題を解決するための手段

0009

本発明の請求項1に係る発明は、一対の電極と、有機物と、前記有機物を分解し電子を放出する細胞外電子伝達能を有する微生物と、前記電子を前記一対の電極の一方に伝達するメディエータとを備える微生物燃料電池において、前記微生物は光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を有し、前記メディエータがポルフィリン含有することを特徴とする。

0010

本発明の請求項2に係る発明は、前記一対の電極と、前記有機物と、前記微生物と、前記メディエータとは、容器内に設けられており、前記容器は、微生物を活性化させるための外部光遮断され、内部を暗室状態にし得るように構成されていることを特徴とする。

0011

本発明の請求項3に係る発明は、前記ポルフィリンが、水溶性ポルフィリンであることを特徴とする。

0012

本発明の請求項4に係る発明は、前記水溶性ポルフィリンが、カチオン性であることを特徴とする。

0013

本発明の請求項5に係る発明は、前記水溶性ポルフィリンが、鉄ポルフィリン又はマンガンポルフィリンであることを特徴とする。

0014

本発明の請求項6に係る発明は、一対の電極と、有機物と、前記有機物を分解し電子を放出する細胞外電子伝達能を有する微生物と、前記電子を前記一対の電極の一方に伝達するメディエータとを備える微生物燃料電池において、前記微生物は光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を有し、前記一方の電極はポルフィリンで修飾されていることを特徴とする。

0015

本発明の請求項7に係る発明は、前記一対の電極と、前記有機物と、前記微生物と、前記メディエータとは、容器内に設けられており、前記容器は、微生物を活性化させるための外部光が遮断され、内部を暗室状態にし得るように構成されている ことを特徴とする。


発明の効果

0016

本発明の微生物燃料電池によれば、ポルフィリンを通じて微生物から電極へ電子を伝達させることにより、電極から遠く離れて浮遊した微生物からも電子を電極へ伝達させることができるので、電流密度を増加させることができる。また、外部光の無い環境下でも電力を発生させることができるので、下水配管の中での廃棄物を用いた発電などにも活用できる。


図面の簡単な説明

0017

本実施形態に係る微生物燃料電池の全体構成を示す縦断面図である。 本実施例に係る電気化学セルの全体構成を示す図であり、(A)斜視図、(B)縦断面の模式図である。 本発明の実施例1の結果を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例2の結果を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例3の結果を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例4の結果を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例5の結果を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例6の結果(1)を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例6の結果(2)を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例6の結果(3)を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例6の結果(4)を示す電流−時間曲線である。 本発明の実施例7に係る電気化学セルの全体構成を示す図であり、(A)斜視図、(B)縦断面の模式図である。 本発明の実施例7の結果を示す電圧−時間曲線である。 本発明の実施例7の結果を示す電流−電圧、電力曲線である。


実施例

0018

微生物燃料電池で電流生成を決定する因子は多様であるが、電極の比表面積装置スケール電極材料の選択は化学電池でも共通の因子であるのに対し、微生物から電極への電子移動は微生物燃料電池に特有であることから中でも最も重要である。にもかかわらず、微生物から電極への電子移動反応機構について研究し、それを電流密度の増大につなげた研究報告の例はほぼ皆無である。その理由として、電流生成を行う生きた微生物の電極反応電気化学的研究するのに適した系が知られていなかったことがあげられる。本発明者はその点に注目して電気化学的研究を行うことによって本発明を行った。

0019

以下の説明は、細胞外電子伝達能を有する微生物の一種であるShewanellaを例にとって示す。尚、Shewanellaは、本来、深海生存する微生物であり、光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を発揮する。

0020

このShewanellaを用いた微生物燃料電池について検討を行った結果、Shewanellaは有機物である多糖体などを吸収し、細胞膜に局在化したシトクロムから電子を細胞外に放出するが、浮遊している細胞外電子伝達能を有するShewanellaは電極の表面近傍のShewanellaのみで電子伝達が行われ、電極から離れた位置で浮遊しているShewanellaでは電子伝達がほとんど行われず電流生成に寄与していないので、電流量を大きくとることができない原因となっていることを見出した。

0021

図1に示す微生物燃料電池1は、一対の電極2と、前記電極2を電気的に接続する外部回路3と、前記一対の電極2を分離する隔膜4とを備える。一対の電極2は、容器5内に設けられ、当該容器5は前記隔膜4で仕切られている。

0022

隔膜4は、プロトン(H+)を選択的透過させ得るように構成されている。本実施例では、カチオン交換膜を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、高分子膜や、無機膜を使ったものを用いることができる。

0023

容器5内には、電解質が収容されており、一方の電極(負極)2a側には微生物としてのShewanellaを培養した培養液及びShewanellaに養分を供給する燃料としての有機物が注入されている。他方の電極(正極)2bには、酸素を含む空気を供給し得るように構成されている。尚、容器5は、Shewanellaを活性化させるための外部光が遮断されており、内部を暗室状態にし得るように構成されている。

0024

有機物は、特に限定されるものではないが、例えば、メタノールエタノールのようなアルコール類、又は、グルコース等の単糖類デンプンアミロースアミロペクチングリコーゲンセルロースマルトーススクロースや、ラクトース等の多糖類を適用することができる。

0025

上記負極2aにおいて、Shewanellaの代謝を触媒過程として利用し、燃料となる有機物、例えばグルコースを分解し、Shewanellaの代謝廃棄物として出される電子(e-)を伝達することで電気エネルギーを取り出し得るように構成されている。この場合、負極2aにおいて有機物は、二酸化炭素または酢酸などの中間物質分化される。一方、正極2bでは、酸素還元が起きる。

0026

かかる構成に加え、本実施形態の場合、負極2a側に注入され電解質と混合した培養液には、メディエータとしてのポルフィリンが添加されている。ポルフィリンは、安定な酸化還元特性を有し、メディエータとして通常用いられているHNQと異なり、電荷を変えることができるので使いやすいという利点がある。

0027

上記構成において、Shewanellaは、有機物を捕捉すると、内部で電子(e-)とプロトン(H+)とを生成する。ここで、Shewanellaは、光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を発揮するので、暗室状態である容器5内においても電子を生成することができる。

0028

培養液中に添加されたポルフィリンは、Shewanellaに接近して、Shewanellaから電子(e-)を放出させる。放出された電子(e-)は隣接するポルフィリンに伝わり最終的に負極2aへと運ばれる。これによって、微生物燃料電池1は、ポルフィリンを添加しない場合と比べ大幅な電流生成を生じさせることができる。電子(e-)は、外部回路3を介して、正極2bへ移動する。

0029

また、プロトン(H+)は、隔膜4を透過して正極2b側に移動する。正極2b側に移動したプロトン(H+)は正極2bから電子(e-)を受け取り、空気に含まれる酸素と結合してH2Oを生成する。このようにして、微生物燃料電池1は、暗室状態である容器5内において、正極2b側で、負極2a側から供給される電子(e-)を順次消費することにより、電流生成を生じさせることができる。

0030

ポルフィリンは、シトクロムの活性中心であるヘム構造類似性を持ち、中心金属により酸化還元特性を変えることができる。また、環外周部への置換基導入が可能で、正電荷負電荷を持たせることができ、ポルフィリンは効率的なメディエータとして作用する。

0031

ポルフィリンは、Shewanellaが一般的に生存する水に溶け親水性の方が望ましいが、Shewanellaが親水性以外の液体で生存できるのであれば親水性である必要はない。

0032

一般的に、Shewanellaは負に帯電しているので、ポルフィリンは、正に帯電したカチオン性のほうがShewanellaに接近しやすく電流を増大させる効果がより大きくなる。また、正に帯電したカチオン性のポルフィリンは、より強い相互作用静電的な相互作用)によって、より効率的な電子授受を行うことが出来る。

0033

また、使用するポルフィリンは、中心金属がマンガン(Mn)、鉄(Fe)といったc−シトクロムの酸化還元電位と近いものがより効果がある。

0034

尚、上記実施形態では、Shewanellaを例にとって説明したが、使用する微生物は細胞外電子伝達能をもつものであれば特に限定されるものではない。例えば、微生物単独でなくミックスドカチャーと呼ばれる混合形の微生物でもよい。

0035

また、上記実施形態では、ポルフィリンを負極2a側のShewanellaが浮遊する培養液中に添加する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、負極2aにポルフィリンを修飾させても、同等の電流を増大させる効果が得られる。

0036

以下、実施例について説明する。実施例では、光の無い環境下でも電流発生量を増加させることができることを確認するため、全て暗室条件微生物電流生成値測定を行った。微生物としては、光が無い環境下でも細胞外電子伝達能を発揮することができるShewanella loihica PV-4を用いた。Shewanella loihica PV-4はATCC(American Type Culture Collection)より購入した(カタログ番号(2008年度版);BAA-1088)。

0037

実施例1〜6は請求項1〜4に対応する。実施例1〜5は、負極2a側に注入された培養液にメディエータとしてのポルフィリンを添加した場合の効果について、種々のポルフィリンを用いてそれぞれ確認した。ここで、ポルフィリンは、MnTMPyP[manganese (III) meso-tetrakis(N-methyl-4-pyridyl)porphyrin]、FeTMPyP[iron (III) meso-tetrakis(N-methyl-4-pyridyl)porphyrin]、MnTPPS[manganese (III) meso-tetrakis(4-sulfonatophenyl)porphyrin]、MnTPP[manganese (III) meso-tetraphenylporphyrin]、及びFeTPP[iron (III) meso-tetraphenylporphyrin]を用いた。

0038

また、実施例6では、培養液に添加するポルフィリンの濃度と微生物電流生成値との関係について調べた。用いたポルフィリンは、MnTMPyPとし、MnTMPyPの濃度は、1, 5, 20, 30mMとした。

0039

さらに、実施例7は、請求項5に対応し、ポルフィリンで修飾した負極を用いた場合の効果を確認した。修飾に用いたポルフィリンは、MnTAPyP [manganese (III) meso-tetrakis(N-aminoethyl-4-pyridyl)porphyrin]である。

0040

尚、以下に述べる実施例は電気化学セルでのデータであり、実際の微生物燃料電池の形状とは異なるが、電流増大効果の発現は変化がない。

0041

(実施例1)MnTMPyPの例 本実施例で用いた電気化学セル10について、図2を参照して説明する。尚、本図(A)は、電気化学セル10の全体斜視図、本図(B)は、(A)における縦断面を模式的に示す図である。

0042

図2に示す電気化学セル10は、上記負極2aに対応する作用極12と、上記正極2bに対応する対極13及び参照極14と、上記容器5に対応する反応槽16とを備え、作用極12と対極13及び参照極14とは外部回路3に電気的に接続されている。

0043

尚、電気化学セル10は隔膜を有さず、反応槽16内が仕切られていない点において、上述した微生物燃料電池1と構成が異なるが、上記したように、電流増大効果の発現は変化がない。実際の使用においては、長期間の使用に耐え得るようにするため、負極2aと正極2bとは隔膜4で仕切るのが好ましいが、以下に述べる実施例では、本発明の特徴的構成であるメディエータとしてポルフィリンを用いた場合の電流値を測定できれば足りるので、隔膜4を有さない電気化学セルを用いた。

0044

また、反応槽16内は、電解質が収容されており、温度調整用配管17a,17bによって反応槽16の周囲を循環する温度調整用媒体によって一定温度に保持される。

0045

本実施例において、反応槽16は、上板18と下板19と、前記上板18及び下板19で保持された筒状部材20とからなる。筒状部材20と下板19との間に、上記作用極12が保持されており、また、上板18に対極13及び参照極14が保持されている。上板18と下板19とはボルト21,21で締結されている。反応槽16内には、MnTMPyPとShewanella loihica PV-4を含む懸濁液が注入され、電解質と混合されている。

0046

Shewanella loihica PV-4は以下の手順で培養した。寒天培地(Marine Broth 20 g L-1, Agar(寒天)15 g L-1)上で保存されているコロニーを1日MB(Marine Broth 20 g L-1) 中、30°Cで前培養した後に、培養液をDM-Lに替え2日間30°Cで培養した。遠心分離を行いMnTMPyPを含んだDM-LでShewanella loihica PV-4を懸濁させ図2に示す電気化学測定用の電気化学セル10のシリコンゴム栓15を貫き反応槽16内に注入した。電気化学セル10内でのMnTMPyPの濃度は10mMとなるようにした。

0047

作用極12にはITO電極(電極面積 3.14 cm2)、対極13には白金線、参照極14にはAg|AgCl|KClsat.電極を用い、電解質は電気化学セル10内がDM-L4.0mLとなるように調製した。

0048

電気測定はHSV-100(Hokuto Denko)を用いた。作用極12の電位は参照極14に対して+0.2Vに固定した。温度は25°Cで行い、電気化学セル10を図示しないシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。また、比較として、MnTMPyPを含まない電気化学セル10を用いて測定した。

0049

尚、DMとは、Difined Mediaの略で、その組成(各 gL-1)は、NaHCO3 2.5、CaCl2・2H2O 0.08、NH4Cl 1.0、MgCl2・6H2O 0.2、NaCl 10、2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl] ethanesulfonic acid (HEPES緩衝溶液) 7.2である。Shewanella loihica PV-4への電子供与体としてsodium lactate(ラクテート)を10mM、また本培養時にはShewanella loihica PV-4に必要な微量な養分を供給するため有機物としてyeast extractを0.5gL-1も加えた。以下ラクテートの入ったDM培地をDM-Lと記す。

0050

また、MnTMPyPは、以下の手順で生成した。まず、TMPyPを合成した。TMPyP [meso-tetrakis(N-methyl-4-pyridyl)porphyrin]の金属錯体を合成するにあたり、まず金属フリーのTPyP[meso-tetrakis(4-pyridyl)porphyrin)]を合成した(Ref. A. D. Adler et al J. Org. Chem., 1967, 32, 467.、 R. F. Pasternack et al J. Am. Soc. Chem., 1972, 94, 4511-4517.)。酢酸中にピロールと4-ピリジルカルボキシアルデヒドを加えて120°Cで2時間還流した。減圧して酢酸を留去した後に、カラムクロマトグラフィー溶媒クロロホルム・メタノール、充填剤シリカゲル)で精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶させてTPyPを得た。この得られたTPyPをN, N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、p-トルエンスルホン酸メチルを加えて150°Cで12時間還流した。氷冷濾別にてTMPyPを得た。

0051

このようにして得たTMPyPを用いてMnTMPyPを合成した(Ref. J.-H. Fuhrhop et al Inorg. Chem., 1998, 37, 6052-6059.)。すなわち、TMPyPをDMFに溶かし、酢酸マンガン(II)を加えて140°Cで3時間撹拌した。減圧してDMFを留去した後、純水に溶解しそこにアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを加えて沈殿させ濾別した。純水に溶解し陰イオン交換樹脂塩化物イオン)に通して、エバポレーターで溶媒を除去し、減圧して乾燥させ、MnTMPyPを得た。その結果得られたMnTMPyPとShewanella loihica PV-4を含む懸濁液を電気化学セル10内に注入した。

0052

このようにして構成された電気化学セル10では、Shewanella loihica PV-4がラクテートを捕捉すると、内部で電子(e-)とプロトン(H+)とを生成する。

0053

電気化学セル10内に添加されたMnTMPyPは、Shewanella loihica PV-4に接近して、Shewanella loihica PV-4から電子(e-)を放出させる。放出された電子(e-)は隣接するMnTMPyPに伝わり、最終的に作用極12へと運ばれる。電子(e-)は、外部回路3を介して、対極13へ移動する。

0054

また、プロトン(H+)は、対極13側に移動する。対極13側に移動したプロトン(H+)は対極13から電子(e-)を受け取り、空気に含まれる酸素と結合してH2Oを生成する。このようにして、電気化学セル10は、暗室状態において、作用極12側から対極13側へ電子(e-)が流れることにより発生する微生物電流生成値を測定した。

0055

この結果、得られた電流−時間曲線を図3に示す。MnTMPyPを添加した場合は、MnTMPyPが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)時に比べて、微生物電流生成値が25倍以上に飛躍的に向上した。尚、10時間以降に見られる電流の減少は、燃料であるラクテートの消費に帰属される。

0056

(実施例2)FeTMPyPの例 実施例1と同様に、Shewanella loihica PV-4を培養したDM-L中にFeTMPyPを添加した懸濁液を電気化学セル10に注入した。電気化学セル10内でのFeTMPyPの濃度は10mMとなるようにした。また、比較として、FeTMPyPを含まない電気化学セル10を用いて測定した。電気化学セル10はシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。

0057

尚、FeTMPyPは、以下の手順で生成した(Ref. R. F. Pasternack et al J. Inorg. Nucl. Chem., 1977, 39, 1865-1870.)。すなわち、上記実施例1にて得たTMPyPをDMFに溶かし、塩化鉄(II)を加えて140°Cで8時間撹拌した。減圧してDMFを留去した後、純水に溶解しそこにアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを加えて沈殿させ濾別した。純水に溶解し陰イオン交換樹脂(塩化物イオン)に通して、エバポレーターで溶媒を除去し、減圧して乾燥させ、FeTMPyPを得た。

0058

この電気化学セル10を用いたときの電流−時間曲線を図4に示す。FeTMPyPを添加した場合は、FeTMPyPが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)場合と比べ、微生物電流生成値が15倍以上増加した。

0059

(実施例3)MnTPPSの例 実施例1と同様に、Shewanella loihica PV-4を培養したDM-L中にMnTPPSを添加した懸濁液を電気化学セル10に注入した。電気化学セル10内でのMnTPPSの濃度は、10mMとなるようにした。また、比較として、MnTPPSを含まない電気化学セル10を用いて測定した。電気化学セル10はシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。

0060

尚、MnTPPSは、以下の手順で生成した(Ref. A. D. Adler et al J. Org. Chem., 1967, 32, 467.、 M. Tsutsui et al J. Org. Chem., 1973, 38, 2103.、 J.-H. Fuhrhop et al Inorg. Chem., 1998, 37, 6052-6059.)。まず、酢酸中にピロールとベンズアルデヒドを加えて120°Cで2時間還流した。減圧して酢酸を留去した後に、カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム・ヘキサン、充填剤:シリカゲル)で精製後、クロロホルム/ヘキサンで再結晶させてTPP[meso-tetraphenylporphyrin]を得た。このようにして得られたTPPに濃硫酸を加えて90°Cで5時間撹拌した後に、室温でさらに2日間撹拌した。純水で希釈酸化カルシウム中和した後、固形分濾過にて除きエバポレーターで濃縮した炭酸水素ナトリウムを加えてpHを9とし、固形分を濾過にて除いた後、エバポレーターで溶媒を除去した。純水に溶解し陽イオン交換樹脂水素イオン)に通して、エバポレーターで溶媒を除去し、TPPS を得た。このTPPSをメタノールに溶かし、ナトリウムメトキシドを加えエバポレーターで溶媒を除去した。残渣を純水に溶解し、酢酸マンガン(II)を加えて85°Cで3時間撹拌した。純水で希釈し陽イオン交換樹脂に通して、エバポレーターで溶媒を除去した。メタノールに溶解、ナトリウムメトキシドを加えエバポレーターで溶媒を除去し、減圧して乾燥させ、MnTPPSを得た。

0061

この電気化学セル10を用いたときの電流−時間曲線を図5に示す。MnTPPSを添加した場合は、MnTPPSが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)場合に比べ、微生物電流生成値が4倍程度増加した。

0062

(実施例4)MnTPPの例 本実施例は、実施例1に対し、Shewanella loihica PV-4を本培養の際に、MnTPPのN,N-dimethylformamide溶液(1mM)を200mL加えて培養して得たDM-Lを電気化学セル10に注入した点が異なる。また、比較として、MnTPPを含まない電気化学セル10を用いて測定した。電気化学セル10はシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。

0063

尚、MnTPPは、以下の手順で生成した(Ref. A. D. Adler et al J. Inorg. Nucl. Chem., 1970, 32, 2443-2445.)。すなわち、上記実施例5にて得たTPPをクロロホルムに溶かし、少量のメタノールに溶かした塩化マンガン(II)を加えて70°Cで8時間還流した。反応混合物飽和食塩水洗いクロロホルムで抽出無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にエバポレーターで溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム・メタノール、充填剤:シリカゲル)で精製後、クロロホルム/ヘキサンで再結晶させてMnTPPを得た。

0064

この電気化学セル10を用いたときの電流−時間曲線を図6に示す。MnTPPを添加した場合は、MnTPPが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)場合に比べ、微生物電流生成値が2倍以上増加した。

0065

(実施例5)FeTPPの例 本実施例は、実施例1に対し、Shewanella loihica PV-4 を本培養の際に、FeTPPのN,N-dimethylformamide溶液(1mM)を200mL加えて培養して得たDM-Lを電気化学セル10に注入した点が異なる。また、比較として、FeTPPを含まない電気化学セル10を用いて測定した。電気化学セル10はシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。

0066

尚、FeTPPは、以下の手順で生成した(Ref. A. D. Adler et al J. Inorg. Nucl. Chem., 1970, 32, 2443-2445.)。すなわち、上記実施例5にて得たTPPをクロロホルムに溶かし、少量のメタノールに溶かした塩化鉄(II)を加えて70°Cで8時間還流した。反応混合物を飽和食塩水で洗いクロロホルムで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後にエバポレーターで溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム・メタノール、充填剤:シリカゲル)で精製後、クロロホルム/ヘキサンで再結晶させてFeTPPを得た。

0067

この電気化学セル10を用いたときの電流−時間曲線を図7に示す。FeTPPを添加した場合は、FeTPPが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)場合に比べ、微生物電流生成値が2倍以上増加した。

0068

(実施例6)MnTMPyPの濃度の影響 実施例1と同様に、Shewanella loihica PV-4を培養したDM-L中にMnTMPyPを添加した懸濁液を電気化学セル10に注入し、当該電気化学セル10内の濃度が1, 5, 20, 30mMとなる4種の電気化学セル10を用意した。電気化学セル10はシールドケース内に配置し、暗室内で測定した。

0069

この電気化学セル10を用いたときの電流−時間曲線を図8〜図11に示す。MnTMPyPを添加した場合は、MnTMPyPが存在しない(Shewanella loihica PV-4のみ)場合に比べ、微生物電流生成値がそれぞれ3, 18, 20, 18倍程度増加した。

0070

(実施例7)ポルフィリン(MnTAPyP)で修飾したグラファイト電極を用いた例 本実施例で用いた電気化学セル30について、図12を参照して説明する。尚、本図(A)は、電気化学セル30の全体斜視図、本図(B)は、(A)におけるボルトの長手方向を縦とした場合の縦断面を模式的に示す図である。

0071

電気化学セル30は、負極31と、正極32と、上記容器5に対応する反応槽33とを備え、負極31及び正極32は外部回路3に電気的に接続されている。尚、電気化学セル30は隔膜を有さず、反応槽33内が仕切られていない点において、上述した微生物燃料電池1と構成が異なるが、上記したように、電流増大効果の発現は変化がない。

0072

本実施例において、反応槽33は、上板34と下板35と、筒状部材36と、正極保持部37とを有する。筒状部材36と正極保持部37とは、上板34と下板35とで挟持されている。筒状部材36の側面には、シリコンゴム栓38が設けられており、当該シリコンゴム栓38を通じて負極31が反応槽33内に保持されている。また、正極保持部37は、板状の正極32を反応槽33内に露出した状態で保持し得るように構成されている。上板34と下板35とはボルト21,21で締結されている。この反応槽33内には、微生物、及び有機物を含む電解質が設けられている。

0073

電気化学セル30において、微生物源として水田の土を0.2g(wet)、電解質としてリン酸バッファー(200mM、pH 6.8)12mL、有機物としてstarch、peptone、fish extractを混合したもの(75g COD/L)、負極31としてポルフィリンで修飾したグラファイト電極(1 cm2)、正極32として白金(8 mg/cm2)を保持した炭素シートを使用した空気極(7 cm2)、外部回路3として10 k ohmの外部抵抗を用いた。尚、グラファイト電極はチタン線接合され、シリコンゴム栓38を通じて電気化学セル30に組み込まれている。このように構成された電気化学セル30は30°C保温庫に配置、暗室条件で測定した。測定にはHA-1510(Hokuto Denko)を用いた。

0074

尚、グラファイト電極は以下のようにして作製した。

0075

まず、グラファイトフェルトを濃硫酸、濃硝酸(3:1)の混酸に浸し超音波処理を6時間行った。グラファイトフェルトを取り出し、純水で酸が出なくなるまで洗ったのち、乾燥させた。

0076

一方、MnTAPyP は、以下の手順で合成した(Ref. S. Asanuma et al Bioconjugate Chem., 2004, 15, 1360-1365.)。すなわち、上記実施例1にて得たTPyPをDMFに溶かし、1−ブロモエチルアンモニウムブロミドを加えて150°Cで12時間還流した。DMFを留去したのちジクロロメタンで洗い純水で抽出した。エバポレーターで溶媒を除去した。得られたTAPyPをDMFに溶解し酢酸マンガン(II)を加え140°Cで3時間撹拌した。減圧してDMFを留去した後、純水に溶解しそこにアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを加えて沈殿させ濾別しMnTAPyP を得た。

0077

次いで、上記のMnTAPyPをDMFに溶解し上記のグラファイトフェルトを溶液に浸した。少量のトリエチルアミンを加え、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩と1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを加え0°Cで2時間撹拌した後、室温で1日撹拌にした。グラファイトフェルトを取り出し、純水でポルフィリンの色が出なくなるまで洗ったのち、乾燥させた。このようにして、ポルフィリンで修飾したグラファイト電極を作製した。

0078

このグラファイト電極を用いた場合の電圧−時間曲線を図13に示す。ポルフィリンで修飾したグラファイト電極は、ポルフィリンで修飾していない電極に比べて、微生物による起電力値が1.5倍程度増加した。図14に電圧−電流、電力曲線を示す。ポルフィリンで修飾していない電極に比べて、電力が2倍以上増加した。

0079

以上の結果から、ポルフィリンを微生物の培養液に添加することにより、ポルフィリンを添加しない場合に比べ、大きな電流量を得られることが確認できた。また、ポルフィリンで修飾した電極を負極に用いた場合には、ポルフィリンを微生物の培養液に添加した場合と同等の電流量が得られることが確認できた。

0080

1 微生物燃料電池 2 電極 2a 負極 2b 正極 3 外部回路 4 隔膜 5 容器 10 電気化学セル 12 作用極 13 対極 14 参照極 15 シリコンゴム栓 16 反応槽 17a 温度調整用配管 18 上板 19 下板 20 筒状部材 21 ボルト 30 電気化学セル 31 負極 32 正極 33 反応槽 34 上板 35 下板 36 筒状部材 37 正極保持部 38 シリコンゴム栓


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