除染・クリーンエネルギー・安心生活

放射性物質で汚染された環境の回復

最終更新日:2016/12/09

推定市場規模
5000億円

 世界中で既に導入されている原子力による発電は、それまでの発電手法に比べて大規模で安定的な電力供給を可能にしたと共に、その後の使用済み燃料の後処理や事故が起きた際の汚染問題を引き起こした。現在、これらの汚染物質をあらゆる方法で回収・無力化するための研究が進行中だ。微生物や光合成細菌をはじめとした、対象となる物質に効力がある材料を活用する方法が実用化する事で、汚染されてしまった土壌を元の状態に復元することが可能になるかもしれない。
一方、この課題に対して環境省は「放射性物質汚染対処特措法」として平成26年度に5000億円の予算を設定している。

未来への変化の兆し

  • バイオレメディエーション

     有害物質によって一度汚染された土壌を元の状態に復元する事は、作物の生産や生活用水の確保などその土地で再度安心して生活するために必要不可欠なプロセスである。
     現在、藻類や微生物あるいは植物を用いてこうした有害物質の除染や減容を行うバイオレメディエーションという研究が進んでいる。

     2014年筑波大学から放射性セシウムを高度に吸収する微生物藻類は、培地に添加した放射性137Csを2日以内に90%以上を吸収・除去することが可能であり、放射性物質回収および除去を低コスト・省エネルギー・低環境負荷で実行できるという手法が発見された。
     放射性物質吸収実験では人体に吸収されやすい有害物質に微細藻類を加え培地で培養することで吸収能力を実証したと言われ、この手法は世界中の汚染地域における早期復旧・復興に貢献すると目されている。
     
     実用化に向けては、有害物質の回収や現地での実証実験による効果測定など踏むべきプロセスや課題が多く残されているが、吸収性の高い微細藻類の発見をはじめとして今後に向けた動きが活発な分野である。 バイオレメディエーション
  • 光合成細菌株

     重金属を回収する性質を持った光合成細菌の研究が注目されている。
     放射線核種を含む広範囲の重金属に対して高い吸着能力を持つ光合成細菌株を環境浄化に使用するという手法は、ビーズ状に固めた光合成細菌を汚染土壌の中に入れて除去するなど様々な手法やアプローチでの研究が進んでいる。

     バイオ放射能研究所は環境汚染された地区での実用的放射性物質除去の研究により、植物の光合成細菌を用いプール水・ヘドロに対して約90%の除染効果や南相馬市において腐養質土壌の約70%除染に成功したとしている。
     更に実用化実証実験では、福島県浪江町の農場で行われた土壌除染の検証において土壌懸濁液の放射能を14日間で実に47%除染となる6.18PSv/hから2.91PSv/hにまで低減させ、除染土壌での野菜栽培が可能かの栽培試験にも取り組みをはじめているという。

     こうした技術は専門的な装置などを必要とせず低コストな汎用技術であるため、今後途上国でも実用可能と期待されているが、光合成の条件があるため全ての環境において安定的に効果を発揮できるという段階まできてはいない。今後環境に左右されず使用できることで除染した土壌を使い安全な食糧生産を再開可能になることが期待されている。 光合成細菌株
  • セシウムを細胞から汲み出す技術

     水中に含まれてしまった放射性のセシウムイオンをどのように回収するか、従来の研究では水素イオンよりも重い荷電粒子を決まった方向に光で輸送することは不可能とされていた。

     しかし、2013年に名古屋工業大学が「海洋性バクテリアからナトリウムイオンをくみ出すたんぱく質を発見」し、東京大学と共同で構造を解析。
     その結果2015年12月に2大学共同で「The Journal of Physical Chemistry Letters」に光のエネルギーを使ってセシウムイオンを細胞からくみ出すたんぱく質を世界で初めて作成したという論文を掲載した。

     従来の除去方法に対し、光というクリーンなエネルギーを利用し「全く発想の異なった回収法につながる可能性がある」として実用化に向け輸送効率や制御の向上を目指して研究が進んでいる。
      セシウムを細胞から汲み出す技術
  • 葛飾北斎が好んだ顔料を活用する

     放射性セシウムをどれだけ効率的に、低コストで、徹底的に行うか。除染における大きなテーマだ。
     汚染された土壌や海水からセシウム「のみ」を取り除くのは技術的に難しく、回収作業時にはまずセシウムイオンと似た性質の物資を先に取り除く、というプロセスが必要だ。

     東京大学の研究グループが2016年に開発した方法は、かの葛飾北斎が好んだといわれる顔料「プルシアンブルー」の結晶構造がセシウムイオンを捉える性質を持つことに着目した。
     和紙に刷られた浮世絵が雨に濡れても溶け出さない点にヒントを得て、セルロースナノファイバーを混ぜたスポンジを開発、汚染された土壌での実証実験では1か月で放射線量が半分まで引き下げられ、真水や海水であれば99%以上の除染効率となった。

     実用化においては、大規模な実証実験が必要となるが、こうした技術が実用化されることで汚染された土壌や地域の早期回復に役立つかもしれない。 葛飾北斎が好んだ顔料を活用する

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