ロボットと社会システムをイノベーション「誰よりもロボティクスの未来を信じています」

イノベーションとの出会い

社会システムへの関心

小さい頃から私の関心のベクトルはいつも外に向いていて、小学校の図書館の本を手当たり次第に読破していました。子どもながらに歴史や国際情勢、社会の仕組みを把握しようとしていたのだと思います。

また、教育者であった両親から英語の指導を受け、幼少期から海外志向が強い子でした。その流れで米国へ留学した時、ソシオロジー(社会学)と幸運にも出会いました。そこで、今まで我流で探求してきたことが、学問として体系化されていたことに、目から鱗が落ちたのを鮮明に覚えています。

学士を卒業した後、アカデミックの道に進むか否か迷いました。しかし、机上の議論のみではどうしても満足できない自分に気づき、ビジネスの世界に飛び込むことにしました。

就職先として、黎明期にあったEラーニングのプラットフォームを開発するベンチャー企業を選択しました。そこで、外国人の創業者と二人三脚で、プレゼンから企業法務までベンチャーのまわし方を一通り実践したことが今に繋がります。

また、当時はインターネットの創生期であったこともあり、授業コンテンツを配信するためのストリーミング技術も貧弱でした。そのような新しいニーズに、先端技術でどう対応するか、それを踏まえてどういう制度が必要かを検討するなかで、新しい社会システムが構築される過程を経験できたことは貴重だったと思います。

この実践を学術的に整理するため、事業は他人にバトンタッチし、アカデミックに戻りました。

社会システムからロボットへ

まず、早稲田大学の社会科学研究科で、哲学と倫理を掛け合わせた新しい社会システムの構築について研究しました。

その後、ロボティクスのパイオニアとして世界中に知られている東京工業大学の広瀬研が人材を募集していたので、応募しました。「社会システム」と「ロボット」は一見かけ離れた専門分野に思われるかもしれませんが、N.ルーマン理論というシステム工学的なアプローチで「社会システム」を研究していたため、私の中ではつながりました。

2005年当時は、ロボットが産業としても未成熟で、社会での受け入れ体制も不完全でした。とはいえ、日本人は、「八百万の神」が土壌にあるので、ロボットをツールとして抵抗なく使いつつも、「ロボットにはハート(心臓、心)がある」という考えに飛躍もできるんですね。これが西欧の人にとってはなかなか理解しがたいようです。そこで、大学院の博士課程では、「ロボット倫理に関する理論研究」を開始し、社会の現代化とロボット需要の関係を明らかにするとともに、社会システム理論における人間の意味の変容を読み解くことに努めました。

オープン・イノベーションの取組み

北野菜穂、ミケレ グアラニエリ、パウロ デベネスト

ハイボット創業

そうこうしているうちに、広瀬研で、研究成果を活かすためにハイボットの創業の話がもちあがりました。創業メンバーは、インターナショナルな人材に富んでおり、日本の技術力、西欧のデザイン力、ラテンの情熱がブレンドされています。卒業生だけでなく、当時現役の先生が二人(広瀬 茂男氏 (東京工業大学 名誉教授)、福島 E.文彦氏(東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻 准教授))、留学生も二人混在したユニークなチームでした。当時私はイタリアにいたのですが、ベンチャー企業の創業経験があったため、お声掛けいただき、勢いで参画しました。 

私は、イノベーションは、技術だけではなく、各人の経験やキャラクターが、タイミング良く適所にそろって初めて成立すると考えていますので、当社ではイノベーションを起こす場を作り、整える役に徹底しています。

産学連携モデルの構築

当社が対象にしているのは、高圧電線・水道管・ガス管などの社会インフラの点検、プラント配管の点検、 災害レスキュー、屋内外の危険作業・重労働作業の代行、そして福祉介護など、 様々な特殊環境で活躍するロボットです。

このような極限状態の課題を解決するために、創業時から、大学との協力関係を構築してきました。 例えば当社のケースでは、最初から先生方と企業との距離間が絶妙でした。先生方は、ロボットの技術は大好きですが、経営は任せてくれました。これは、お互いの信頼関係がなければできないことです。

また、創業当時は、外部調達をせず、東京工業大学のインキュベーション制度を活用しました。この制度はベンチャーにとって有り難いものの、2年間の期限付きでした。ある程度歩けるようになったときには、突き放すような体制ができていたので、緊張感をもって鍛えられました。

その間、産学連携の新しいモデルを確立することに尽力しました。大手企業が研究室の技術を欲しがるのですが、大学と直接交渉すると時間がかかることがあります。そこで、大手企業が、当社を介して、産学連携ができる仕組みを模索しました。案件の都度、大学の倫理規定に照らし合わせ、問題ないかを大学と確認していき、ある意味で“清らかな産学連携”のノウハウを蓄積することができました。

その成果の一つとして、東京工業大学や関西電力らと共同で、高圧送電線のメンテナンス作業をオートメーション化するために、「高圧電線点検ロボットEXPLINER」を開発し、2010年のロボット大賞における「中小企業基盤整備機構理事長賞」や、「2012 年度日本機械学会優秀製品賞」を受賞しました。

また、小径配管のスクリーニング検査を可能とするために、経済産業省地域イノベーション創出研究開発事業として、連結ヘビ型管内推進ロボットを用いた配管腐食検査システムを、産学連携で開発しました。

知財を基調とした新しい取り組み

このように共同研究を基調とする産学連携については、東京工業大学という親の七光りから成長し、ハイボットとして仕事を回していけるようになりつつあります。

一方で、知財を基調とする産学連携については、今後の挑戦テーマです。 東京工業大学だけでなく、国内外の大学の知財を活かすために、大学からライセンスを受けたり、場合によっては、パートナーと共同で権利を売買したりするなど、新しいスキームの構築と実践に取り組んでいくつもりです。

astamuse.com のユーザーへメッセージ

極限環境で課題を抱えるエンドユーザーの方へ

ハイボットのパートナーは、極限環境の現場に対峙するエンドユーザーです。 ロボットに対する思いいれのあるエンドユーザーから、操作性やコストダウンについて山のようにフィードバックをいただき、密接に連携していかないと駄目だと考えています。 エンドユーザとの連携で重要な点が2点あります。第一に、実用化を真剣に考えていらっしゃるか、第二に、それは軍事目的ではないか。 この条件がクリアすれば、規模の大小は問いません。チャレンジングで面白いテーマがあれば是非お声掛けください。

新しい要素技術をお持ちの方へ

ロボットは要素技術が勝負です。当社が手掛けるロボットシステムも、完成度の高い要素技術があってこそ完成します。例えば、水陸両用ヘビ型ロボットのACM-R5は、高い防塵防水性を有する蛇腹に特徴がありますが、これは蛇腹素材を裁縫する際の隙間を無くす技術によって実現できました。

当社には、新しい要素技術が活躍するためのエンドユーザーニーズが豊富にありますので、色々な要素技術の提案をお待ちしております。例えば、昨年からは当社のマイコンは、スイスのSTマイクロエレクトロニクス社製も取り入れました。これは先方にとっても先進事例となったので、海外の展示会でご紹介いただくなど、WIN-WINの関係を構築できています。いい技術であれば広く門戸を開き、オープン・イノベーションを国際的に実践するつもりです。

世界を舞台に活躍したいエンジニアの方へ

当社のメンバーは多様性に富んでおり、日本の技術力、西欧のデザイン力、ラテンの情熱がブレンドさせた社風です。ベンチャーなので忙しいですが、中東や欧州など世界中の方と連携して、最先端のロボットを開発していくことができます。ものづくりを心から楽しめる方を歓迎しています。

ロボットはまだまだ未熟な新産業なので、既存のカテゴリーに縛られず、いっしょに面白いことを仕掛けていきましょう!

(インタビュー 2013/10/01)

プロフィール

北野菜穂

Naho Kitano 北野菜穂
  • 株式会社ハイボット 代表取締役
  • 1974 静岡県藤枝市生まれ
  • 1996 中国北京外語師範大学留学修了
  • 1998 カリフォルニア州サンタクルーズ大学留学修了、同年明治学院大学卒業
  • 1999 eラーニングベンチャー創業参画
  • 2002 早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程卒業
  • 2004 株式会社ハイボット設立
  • 2008 早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程修了
  • 2009 代表取締役就任

ミケレ グアラニエリ

Michele Guarnieri
  • 株式会社ハイボット 取締役
  • Ph.D. in Engineering
  • 1973 イタリア・マントバ市生まれ
  • 2000 東京工業大学大学院理工学研究科(広瀬福島研)留学のため来日
  • 2004 株式会社ハイボット設立
  • 2006 同大学院 博士(工学)

パウロ デベネスト

Paulo Debenest
  • 株式会社ハイボット 取締役
  • Ph.D. in Engineering
  • 1976 ブラジル・サンパウロ生まれ
  • 1999 東京工業大学大学院理工学研究科(広瀬福島研)留学のため来日
  • 2004 株式会社ハイボット設立
  • 2005 同大学院 博士(工学)

所属

HiBot Corp.

設立 2004年4月15日
資本金 30,700,000円
事業
  • 社会インフラ設備向けヘビ型点検ロボットの販売
  • ロボット用モータドライバ、マイクロコンピュータ基板
  • ロボット操作卓の販売
  • 新しい極限作業ロボットの設計と開発
所在地 〒153-0064東京都目黒区下目黒二丁目18番地3

オープンイノベーションの事例

配管腐食検査システム開発

本システムは、小径配管のスクリーニング検査を可能とするために、経済産業省地域イノベーション創出研究開発事業として、産学連携で開発を行ったものです。

ロボット用コントローラ開発

Titech M4 Controllerは、STマイクロ社製のSTM 32 bit ARM Cortex M4 168MHzマイコンを搭載したコントローラです。非常にコンパクトでありながら、LAN イーサネット、CANポート、 SPI、UART インターフェース、DI/O、A/D 12bit、D/A、Dig.Acc.、ジャイロと磁 気センサ、USB、MicroSDの機能を備えた、パワフルなコンポーネントを実現できました。

ロボットの製品開発

この世にないロボットをゼロからつくる技術・ノウハウと、ロボットを製品化するノウハウは似て異なるものです。当社は、製品化開発プロセスのノウハウを持っていたベンチャー・プログレス・テクノロジーズ社と提携し、ロボット製品化に関わる部分での技術協力、共同開発を行っています。

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関連する法人

  • プログレス・テクノロジーズ株式会社

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